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スポーツ中の膝内側の痛みー鵞足炎—

いつもコラムをご覧いただきありがとうございます。

金沢市のBivi接骨院の備前です。

 

今回は、ランニングやバスケなどのスポーツで負担がかかることで起こる

「鵞足炎」についてお話しさせていただきます。

 

鵞足炎は、高齢者の方の変形性膝関節症と一緒によく生じる疾患です。

 

本記事は、膝の内側の痛みでお悩みの方に向けた「鵞足炎」について、記事となっております。

 

 

鵞足炎とは?

 

鵞足炎は薄筋(はっきん)、縫工筋(ほうこうきん)、半腱様筋(はんけんようきん)で形成される鵞足と呼ばれる部分にある滑液包(かつえきほう)がランニング動作などを主体とした反復する膝の屈伸により摩擦が生じて炎症を引き起こす病態を指します。

 

まず鵞足について詳しくみていきましょう。

 

 

鵞足とは?

 

鵞足は、前述したように薄筋、縫工筋、半腱様筋から形成されるものであり、これらの筋肉はそれぞれ骨盤の各部位から脛骨(けいこつ)の内側に付着しています。

 

付着する部位が鵞鳥の足に類似していることから鵞足と呼ばれています。それぞれの筋肉の役割を簡単に説明します。

 

 

薄筋

 

薄筋は恥骨結合(ちこつけつごう)と呼ばれる、左右の恥骨が繋がる部分の外側から始まり、脛骨に付着します。

 

股関節に対しては内転(閉じる動作)、屈曲(股曲げる動作)、膝関節に対しては、屈曲、内旋(内側に捻る動作)に作用しています。

 

 

縫工筋

 

縫工筋は鼠径部の上方に位置する上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)と呼ばれる骨盤を前から見た際に一番出っ張っている部分から始まり、脛骨の内側に付着します。

 

股関節に対しては屈曲、外転(開く動作)、外旋(外側に捻る動作)、膝関節に対しては、屈曲に作用します。

 

 

半腱様筋

 

半腱様筋は坐骨結節(ざこつけっせつ)と呼ばれる部分から始まり、脛骨の内側に付着しており、大腿の後面に位置するハムストリングスの筋肉の1つでもあります。

 

股関節に対しては伸展(伸ばす動作)、膝関節に対しては屈曲、下腿に対しては内旋する作用します。

 

これらの筋肉が鵞足を形成し、過度に膝が内側に入るような動作をする際に膝関節の動的安定化を図ります。

 

 

鵞足炎の原因は?

 

鵞足炎の主な原因は鵞足部の滑液包に膝の屈伸動作によって繰り返し摩擦が生じることです。

 

特にランニングを主とするスポーツで発症しやすいですが、スポーツ以外でも変形性膝関節症の方にもよくみられる症状となります。

 

以下の要因が発症のリスクを上げることが報告されています。

 

 

運動量や質の急激な変化

 

一番の原因は運動量の増加や質の変化に伴うオーバーユースです。痛みや違和感などがあっても運動を継続して行ってしまうことで、繰り返しのストレスが生じ、鵞足炎の原因となります。

 

 

膝関節周囲筋の柔軟性低下

 

鵞足はもちろん、膝の屈伸動作に関係する大腿四頭筋やハムストリングスなど、膝関節周囲の過緊張や柔軟性の低下がすることにより鵞足部へのストレスが高まるため痛みが出現する原因となります。

 

また、痛みがあると膝の屈伸を制限してしまうこともあり、悪循環に陥ることもあります。

 

 

間違ったフォームでのランニングや合わないシューズの選択

 

初心者の方や久々の運動でランニングを行う方などは、間違ったランニングフォームで運動を継続してしまい、鵞足炎を発症することが多々あります。

 

また、偏平足やX脚などの下肢の形態異常から鵞足部にストレスが大きくかかり発症の原因となることもあります。

 

それに加えてシューズなどの外的要因が発症のリスクを高める可能性もあります。

 

 

運動前の準備運動不足・運動後のケア

 

鵞足炎に限らず言えることではありますが、準備運動不足はスポーツ障害のリスクを高める要因となります。

 

ストレッチや軽めのジョギングなどのウォーミングアップは血流を促進し、柔軟性の向上やスムーズな身体の動きを行う上で大切な準備運動となります。

 

運動後に関しても、同様にケアをしっかり行わないことで、身体へのダメージが蓄積し、痛みにつながりやすくなります。

 

 

鵞足炎の症状は?

 

鵞足炎の症状は鵞足部の圧痛と運動時や運動後の同部位の痛みです。症状が進行すると安静時にも痛みを認めることがあります。

 

鵞足炎以外にも膝関節周囲に痛みを認める病態はあるため、他の疾患とはっきり鑑別を行うことが重要です。

 

 

鵞足炎の診断・検査は?

 

一般的には問診、触診、身体所見にて評価を行い、鵞足炎の場合は鵞足部の圧痛が特徴的な所見となります。

 

前述したように膝関節周囲の他の類似疾患と鑑別をすることが診断する上で重要となり、レントゲン検査では骨折など骨の異常がないかを確認し、MRI検査では半月板損傷や靭帯損傷などがないかを確認を行います。

 

またエコー検査を用いて炎症の部位を判別することもあります。

 

また、薄筋テスト・縫工筋テスト・半腱様筋テストを用いて簡易的かつ痛みのある筋肉を特定するテストもあります。

 

 

鵞足炎の治療は?

 

鵞足炎の治療は保存療法が基本となります。

 

鵞足炎の場合も、他のスポーツ障害と同様に、オーバーユースが基本的な原因となるため、まず原因となる運動を中止し、安静にすることを最優先にして炎症の軽減に努めます。

 

痛みが強い時期は消炎鎮痛剤を服用したり、鵞足部にステロイド注射を行うこともあります。

 

痛みの状態をみながら併行してリハビリテーションを開始し、再発しないための治療を行っていきます。

 

 

鵞足炎のリハビリテーションは?

 

鵞足炎のリハビリテーションは他のスポーツ障害と同様に、痛みを取ることも重要ですが、しっかりと根本の原因を取り除き、スポーツに復帰した後も再度繰り返さないように介入することが重要となります。

 

 

鵞足部の炎症軽減

 

発症して間もない急性期期間は炎症の軽減に努めます。

 

原因となる運動を中止し、炎症症状が出ている場合はアイシングを中心に物理療法を併せて行います。

 

 

下肢の筋肉ストレッチ

 

下肢の筋肉の緊張緩和を目的にストレッチを行います。

 

特に鵞足部、ハムストリングスのストレッチは直接関与する筋肉のため重要となりますが、ストレッチの方法は様々紹介されており、間違ったやり方をすると痛みを助長してしまう可能性もあるため、状態に合わせた適切なストレッチを指導してもらうことが良いでしょう。

 

 

下肢の筋肉の筋力訓練

 

膝関節周囲の筋力訓練はもちろん、股関節や足関節など隣接する関節に関与する筋肉の筋力向上も重要です。

 

特に臀部の筋肉は姿勢や運動時の動作に大きく関わる筋肉となるため、動きの中でしっかりと使えているかを確認しながらトレーニングを行うことで再発予防に繋がります。

 

 

姿勢・ランニングフォームの修正

 

痛みが消失しても、鵞足炎の原因となる動きの改善ができなければ再度炎症を起こしてしまうため、姿勢やフォームの修正は重要になります。

 

個人に合わせてアライメントの適切な評価を行い、修正すべき点に対して介入を行います。

 

膝関節周囲だけでなく、体幹、股関節、足関節のすべてが姿勢や動作に関係しているため、全体を評価していくことが再発防止に繋がります。

 

鵞足炎の方は、『knee in・toe out』と言われる、膝が内側に入り、爪先が外に向いた姿勢をとりやすいため、負担がかかりやすくなるため、修正することが重要です。

 

また、アライメント修正にはテーピングやインソール等を使用することも有用であり、自分の身体に合った適切なアライメントやフォームを獲得した上で運動を継続していくことがスポーツ復帰には重要となります。

 

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