投球中の肩の痛みー肩峰下インピンジメント症候群ー
いつもコラムをご覧いただきありがとうございます。
金沢市(西金沢)のBivi接骨院の備前です。
今回は、「肩峰下インピンジメント症候群」についてお話しさせていただきます。
✓肩を上げたときに痛みがある
✓特に肩を90°~120°程あげたときが一番痛い
✓ボールなどを投げたときに痛みがある
✓夜に寝ているときに痛みが増す
上記に当てはまる方は、肩峰下インピンジメント症候群の可能性がありますので、本記事がお役に立てると思います。
目次
肩峰下インピンジメント症候群とは?
肩峰下インピンジメント症候群とは、腕を挙げる際に肩に痛みが出る要因の1つであり、肩の痛みの半数近くを占めると言われている病態です。
まずインピンジメントとは「衝突」という意味であり、肩関節において滑液包(かつえきほう)と呼ばれる袋や腱などが挟み込まれて衝突や摩擦を繰り返し痛みが出現する状態となります。
肩峰インピンジメント症候群について詳しく見ていきましょう。
肩峰下インピンジメント症候群の発生機序は?
少し難しいお話になりますが、肩峰インピンジメント症候群がどうして起きているのかを詳しく説明していきます。
正常な肩関節は上腕骨と呼ばれる腕の骨に付着する上腕二頭筋や三角筋、腱板(インナーマッスル)と呼ばれる複数の筋肉が働くことで肩関節の運動を行っています。
特に腱板と呼ばれる棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋などの筋肉は骨頭を肩甲骨にしっかりと引き寄せる支点の役割を果たしており、肩関節を動かす上で重要な筋肉となります。
インピンジメント症候群の場合は、腱板の機能が低下や、姿勢不良が原因でアライメントが崩れることにより腱板が骨頭を引き寄せる力が弱くなります。
そのため、骨頭が上方に偏移してしまい肩峰と上腕骨の間で衝突が起き、滑液包や腱板にストレスがかかることで炎症が起き、痛みが生じます。
肩峰下インピンジメント症候群の原因は?
肩峰下インピンジメント症候群の原因は様々です。
アスリートの場合は、オーバーヘッドスポーツをしている方に多くみられます。
代表的なスポーツとしては野球、バレーボール、テニスなどが挙げられ、腕を大きく振りかぶる動作を繰り返し行うことによってストレスが反復して加わり、炎症を引き起こし、いわゆるオーバーユースが原因となります。
また、スポーツ障害以外にも、日常生活や仕事で腕を挙げる動作が多い方や、高齢者の方で加齢による骨や腱板の退行変性が起きることにより痛みが生じる場合もあります。
大きく分類すると
肩関節の構造上の問題
構造上の問題として、肩関節は上腕骨、肩甲骨、鎖骨にて形成されますが、この骨自体が変形していたり、摩耗して傷んでいる状態になると、インピンジメントを引き起こしやすくなります。
肩関節の機能上の問題
機能上の問題としては、様々な原因で肩関節の運動がスムーズに行えなくなり、拘縮と呼ばれる可動域制限を引き起こしたり、関節運動の支点となる肩甲骨の動きが悪くなることでインピンジメントを引き起こしやすくなります。
また、肩関節だけでなく肩甲骨が付着する肋骨や胸腰椎から骨盤などの体幹部分の機能も大きく関係してきます。
肩峰下インピンジメント症候群の症状は?
肩峰下インピンジメント症候群の代表的な症状は以下の通りです。
肩関節を挙上した際の痛み
有痛弧徴候(painful arc sign:ペインフル アーク sain)
※肩を挙上した際に60°~120°で痛みを認める現象
運動時の痛み(投球動作やオーバーハンド時)
夜間痛(夜間に痛みが増強する)
肩峰下インピンジメント症候群の検査・診断は?
肩峰下インピンジメント症候群のは臨床所見と画像所見を併せて評価を行い、診断をします。
臨床所見としては問診や触診にて痛みがある場所やどの動作で痛みがあるか、日常生活やスポーツ等でどのうような動作が多いかなどを評価します。
画像所見ではレントゲン、MRI、エコーなどを用いて、骨棘(こつきょく)や石灰化の有無、腱板の炎症や断裂がないかを確認します。
また、整形外科的テストとして以下の評価が挙げられます。
Hawkins テスト(ホーキンス テスト)
立位または座位にて、肩甲骨を固定します。
肩関節を外転・外旋90°の状態から内旋方向に動かします。
その際に痛みや異音を認めれば、陽性となります。
Neer テスト (ニア― テスト)
立位または座位にて、肩甲骨を固定します。
その状態で肩関節を内旋位にしたまま、検査者が腕を挙上していきます。
その際に痛みや異音を認めれば陽性となります。
肩峰下インピンジメント症候群の治療は?
肩峰下インピンジメント症候群の治療はまず保存療法が選択されます。
痛みが出る動作は控えるようにして安静に保つことで炎症が軽減するのを待ちます。
痛みの程度によっては消炎鎮痛剤や湿布、局所へのステロイド注射などを行います。
それと同時にインピンジメントを再度繰り返さないために状態に合わせたリハビリテーションを行っていく必要があります。
基本的には保存療法での治療で改善をしていきますが、難治例の場合は関節鏡を用いた手術療法が選択される場合もあります。
肩峰下インピンジメント症候群のリハビリテーションは?
肩峰下インピンジメント症候群のリハビリは痛みを軽減することはもちろんですが、日常生活やスポーツ場面において支障なく動作が行えるように再度繰り返さないことも重要になってきます。
上記の治療に併せて以下のリハビリを併せて行っていきます。
肩関節の炎症の改善
安静に加えて、物理療法を用いて炎症の軽減を図ります。時期に合わせて温熱療法や超音波療法を行います。
肩関節の可動域訓練
肩関節の動きを円滑に行うために、可動域訓練を行います。
インピンジメントが起きている場合、ご自身で動かそうとすると痛みを避けるように動かすことで余計に関節運動は破綻してしまうため、痛みの出ない範囲で正常な運動を獲得します。
腱板を中心とした肩関節周囲筋や体幹の筋力訓練・ストレッチ
腱板の筋力低下はインピンジメントの原因となるため、筋力訓練を行います。
筋力訓練の方法は様々ですが、腱板は大きな筋肉でないため鍛えにくい部分です。
正しい姿勢と負荷で行うことが重要となります。体幹は上下肢を動かす上で幹となる部分であるため、体幹の筋力が低下していたり、バランスが崩れていることが肩関節機能に影響を及ぼすことがあります。
そのため、体幹機能を改善させることも重要な治療となります。
またストレッチに関しても、方法は複数ありますが、肩関節は自由度が高く、複数の筋肉が複雑に連動しているため、それぞれの筋肉に対して適切なストレッチを行うことが大切です。
姿勢やアライメントの修正
姿勢や身体のバランスを修正することも根本的な解決に必要な要素となります。
巻き肩や猫背などの姿勢の乱れは肩関節の動きに大きく関係します。
またその姿勢の乱れは脊椎や骨盤、胸郭など色々な部分が原因で起きている可能性があるため、実際に痛みがある部分だけでなく、身体全体をしっかりと評価し、治療を行っていく必要があります。
運動姿勢の修正
スポーツによる繰り返しのストレスが加わってインピンジメントが起こている場合は、その運動姿勢も評価する必要があります。
前述した機能面を修正した上で、適切な運動姿勢を獲得することで、再発を防ぐことができます。
最後に
肩峰下インピンジメント症候群は筋力と柔軟性、可動性など多くの要因が絡み合って起きる病態です。
セルフケアなどが多くインターネットなどで紹介されてますが、個人の身体や状態に合わせたものを選択することが大切です。
専門家にしっかりと評価してもらった上で適切なセルフケアを行うことをお勧めします。