お尻の痛みや痺れー梨状筋症候群の治療法ー
いつもコラムをご覧いただきありがとうございます。
金沢市(西金沢)のBivi接骨院の備前です。
今回は、「梨状筋症候群」についてお話しさせていただきます。
ふとももの裏やお尻・腰に痛みが走ったり、痺れたりする
座っているとお尻に痛みや痺れがある
ランニング中にお尻に痛みや痺れがある
上記に当てはまる方は、梨状筋症候群の可能性がありますので、本記事がお役に立てると思います。
梨状筋症候群とは?
坐骨神経は骨盤から出て、梨状筋という筋肉のトンネルを通り、下肢に向かっていきます。
その際に梨状筋の硬さなどが原因となり、坐骨神経が圧迫を受け、痛みや神経症状などを呈する病態です。まずは梨状筋に関して詳しく見ていきましょう。
梨状筋とは?
梨状筋とは臀部の深いところにあり、自分で触ることは難しい筋肉です。仙骨(せんこつ)の前面から始まり、大腿骨の大転子(大腿の外側の骨が出っ張った所)という部分に付着します。
梨状筋の作用は主に股関節の外旋(脚を外側に向ける)です。
また、外旋6筋と言われる他の筋肉と共に股関節の安定性を高める役割もあります。
股関節は自由度が高く色々な方向に動かすことができる関節であるため、その補助として骨頭と呼ばれる股関節の支点となる役割を果たしています。
梨状筋症候群の原因は?
前述したように梨状筋症候群は、梨状筋に負担がかかることにより、骨盤から下肢に向かう坐骨神経が圧迫されることが原因となります。
日常生活の動作の中でイメージしやすい原因としては長時間のデスクワークや運転など長い時間座ったままいることや中腰姿勢での作業等が挙げられます。
またランニングを中心にゴルフや野球などの捻る動作を含むようなスポーツでも梨状筋症候群を発症することがあり、基本的にはオーバーユース(使いすぎ)が原因となり梨状筋の柔軟性が低下することによって症状を認めます。
難しいお話にはなりますが、以下に少し専門的な詳細な原因を記載します。
仙腸(せんちょう)関節由来の原因
まず1つ目は仙腸関節が原因となる場合です。仙腸関節とは骨盤を形成する腸骨と仙骨を繋ぐ関節です。
頑丈な靭帯によって包まれているため、関節と言っても動きが目に見えたり、自分で感じたりする部位ではないですが、上半身を支える重要な役割を担っています。
梨状筋は仙腸に付着しており、仙腸関節の機能が低下することで筋緊張が高まり、痛みや神経症状の原因となることがあります。
腰椎椎間関節(ようついついかんかんせつ)由来
次に腰椎椎間関節が原因となる場合です。
椎間関節とは椎骨と呼ばれる背骨の1つ1つの骨を繋ぐ関節です。
腰の骨の一番下である第5腰椎とその下にある仙骨との間から出る神経が梨状筋に関係しており、椎間関節にストレスがかかることにより神経を介して梨状筋の緊張が高まることにより、痛みや神経症状の原因となることがあります。
梨状筋の解剖学的破格(はかく)
最後に梨状筋の破格が原因となる場合です。
表現が非常に難しいですが、簡単に言い換えると、生まれながらにして梨状筋と坐骨神経が症状を引き起こしやすい位置関係にあるということです。
上記の原因と比較してこれが原因になることは非常に稀です。
梨状筋症候群の症状は?
梨状筋症候群は坐骨神経の絞扼性(こうやくせい)神経障害であるため、坐骨神経領域に症状が出ることが特徴です。
皆さんも坐骨神経痛という言葉を耳にしたことがあると思いますが、坐骨神経痛とは病気ではなく症状の1つとなります。
臀部の痛みや坐骨神経に沿った下肢の痛みや痺れが主症状となります。
腰痛は伴わず、臀部や下肢に痛みがあることが特徴です。
症状が出る場面として座っている際や階段の昇り降り、ランニング中などに痛みや痺れを認めることが多いです。
梨状筋症候群の検査・診断は?
梨状筋症候群の診断は基本的に問診、触診等の臨床所見から判断をします。
梨状筋症候群は神経障害であるため、レントゲン検査などでの評価はできません。
腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など他の疾患と判別を行うために、MRIやCT等の検査を行い、痛みの要因が何かを評価することが重要です。
また梨状筋にストレスをかけて症状を誘発する整形外科的テストを一部ご紹介します。
Freibergテスト(フライバーグテスト)
仰向けに寝た状態で、骨盤を固定し、股関節を曲げた状態で内旋(内側に捻る)します。
その際に臀部に痛みを認めれば陽性となります。
股関節を内旋させた状態でのSLRテスト
仰向けに寝た状態で、足を真っすぐ伸ばし股関節を内旋させます。
そのまま上に挙げていき、臀部に痛みを認めれば陽性となります。
Paceテスト(ペーステストorパーステスト)
椅子やベッドに腰掛け、膝を曲げた状態で、検査者が股関節を内旋させる力に抵抗し、その際に臀部の痛みや筋力低下を認めれば陽性となります。
梨状筋症候群の治療は?
梨状筋症候群の治療は基本的に保存療法が選択されます。
痛みや痺れに対しては薬物療法として消炎鎮痛剤や湿布、神経障害性疼痛治療薬と呼ばれる神経に作用する痛み止めを服用します。
痛みが強い場合などはブロック注射を行うこともあります。
また物理療法を用いて、症状の緩和を図ります。
しかし上記の治療は一時的に痛みや痺れが軽減しても根本の原因を取り除く治療とはならないため、リハビリテーションにてしっかりと原因を評価し、治療を行うことが重要となります。
梨状筋症候群のリハビリテーションは?
梨状筋症候群は梨状筋の硬さが原因となるため、ストレッチやリラクゼーションを行い、梨状筋の緊張を緩めながら、原因となる身体の構造や姿勢、運動フォームの修正を行っていきます。
股関節周囲の筋肉のストレッチ・リラクゼーション
梨状筋はもちろん、股関節周囲の筋肉のストレッチやリラクゼーションを行います。
ここで少し難しいお話になりますが、ストレッチが効果的な場合と必ずしもそうでない場合があります。
筋肉が短縮(短くなっている)している状態であれば、ストレッチは有効と言えますが、攣縮している場合は緊張を緩めることのほうが有効となるため、筋肉が陥っている状態をしっかりと把握することが重要となります。
梨状筋の筋力トレーニング
梨状筋の筋力が低下していることにより、坐骨神経に負担がかかりやすくなります。
外旋(脚を外側に向ける)運動を中心に運動療法を行うことで、坐骨神経への負担が軽減されます。
アライメント・運動姿勢の修正
原因で記述したように梨状筋症候群は骨盤や腰椎などの影響によって起こりやすいため、姿勢の状態を評価し、修正することも重要となります。
骨盤、腰椎は身体の幹になる部分であり、他にも姿勢・運動に対して重要な役割を担っているため、適切に評価をしてもらった上で修正をすることが大切です。
また、それに伴い運動が原因で痛みが出現している場合は運動姿勢の修正も必要となります。
最後に梨状筋のセルフストレッチやリリースの方法を紹介します。
座って行うストレッチ
椅子やベッドに腰掛けた状態で片膝を抱え、上半身を膝に近づけるようなイメージで前に捻りながら倒していきます。
強い痛みが出ない範囲で30秒~1分程度維持しましょう。
床に座って行うストレッチ
床に座り、手を後ろに着いて膝を立て、片足をもう一方の膝に乗せます。
手で押すように身体を前に倒していきます。
こちらのストレッチも強い痛みが出ない範囲で30秒~1分程度維持しましょう。
梨状筋のダイレクトリリース
テニスボールなどを梨状筋部分の下に置き、手で身体を浮かすように保持しながらボールをゴロゴロと動かし、梨状筋をリリースします。
痛みが強く出る場合もありますので、可能な範囲で行いましょう。
※こちらに紹介したストレッチ以外にも梨状筋のストレッチはたくさんありますが、その方によってやりやすさや伸び方が変わってきますので、現在の状態や時期なども考慮した上で専門家に指導してもらうことをお勧めします。