ランニングでの膝外側の痛みー腸脛靭帯炎ー
いつもご覧いただきありがとうございます。
金沢市のBivi接骨院の備前です。
今回は、ランニング中あるいはランニング後に出現する膝の外側に痛み
腸脛靭帯炎についてお話させていただきます。
腸脛靭帯炎は陸上選手に多い慢性的なスポーツ障害で、特に長距離選手に多く、別名ランナー膝とも呼ばれています。
ランニング中に膝の外側に痛みを感じる方には、本記事がお役に立てると思いますので、最後までご覧ください。
腸脛靭帯とは?
腸脛靭帯は大腿(太もも)の外側を覆う筋膜が肥厚した部分であり、前方は大腿筋膜張筋、後方は大殿筋の筋膜として骨盤から下降していき、膝の外側からGardy結節(ガーディーけっせつ)と呼ばれる部分に付着しています。
腸脛靭帯は体重を支える、膝関節の外側を安定させる、膝蓋骨(膝のお皿の骨)を安定させることが主な役割となります。
ランニング動作を例に挙げると足を地面の着いた際に身体が外側に傾いていかないように支持する役割を果たしています。
腸脛靭帯炎の原因は?
腸脛靭帯炎の原因はランニング中の膝の曲げ伸ばしの繰り返しにより、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆(がいそくじょうか)と呼ばれる骨が出っ張っている部分が擦れあうことによって炎症が発生することです。
以下に記述する要因が発症のリスクを上げることが報告されています。
①腸脛靭帯の伸張性が低い
②大腿骨外側上顆が大きい(出っ張りが強い)
③股関節を外転させる力が弱い(殿部の筋肉の筋力低下や機能不全)
④内反膝(O脚)や回内足(踵が内側を向いている状態)などの形態異常
⑤過度なランニング
⑥腸脛靭帯の緊張が高まりやすいランニングフォーム
⑦固い地面や坂道での練習などの練習環境
など様々な因子が重なり腸脛靭帯炎を引き起こします。
腸脛靭帯炎の症状は?
腸脛靭帯の症状はランニング中またはランニング後の膝の外側の痛みです。
所見としては、大腿骨外側上顆の圧痛(押すと痛い)が特徴的であり、同部位の腫脹や熱感を伴うこともあります。
初期段階では運動中、運動後に痛みを感じますが、安静時には症状が消失します。
悪化していくと、歩いている時や安静時にも痛みを生じるようになります。
最も重症な例として、膝周囲だけでなく大腿や股関節などにも痛みが出現することも報告されています。
腸脛靭帯の診断・検査は?
腸脛靭帯炎の診断は臨床所見が中心となります。
前述したように腸脛靭帯炎の主な所見は大腿骨概則上顆の痛みが特徴となります。
炎症を引き起こす様々な原因の有無を評価し総合的に判断するのが一般的です。
また、類似する外側半月板損傷等と鑑別するためにMRI検査を行い、腸脛靭帯部の炎症所見を確認することも有用な診断方法と言えるでしょう。
その他、腸脛靭帯炎を評価する以下のような徒手的検査があり、代表的なものをご紹介します。
Grasping test(グラスピングテスト)
大腿骨外側上顆付近で腸脛靭帯を握るように持ち、膝の曲げ伸ばしを行います。
その際に外側上顆部に痛みが出現するかを確認します。
これは、腸脛靭帯部に圧迫を加えることにより靭帯の緊張が強まり、靭帯と外側上部の接触圧が高まることにより痛みを誘発します。
特に急性期(痛みを生じてすぐの時期)の段階ではこのテストが陽性になることが多く、症状が軽減してくるにつれて陰性となるため、治療効果を判定する上で役に立つテストとなります。
Ober test(オーバーテスト)
痛みがある足を上にした側臥位(横向きに寝た状態)になり、膝を90°に屈曲し脱力します。
その状態で検査者がゆっくりと股関節を内転(足を下方に降ろす)させていきます。
その際に腸脛靭帯に痛みが出現したり、十分に股関節が内転できない、股関節が曲がってしまう場合に陽性となります。
これは、腸脛靭帯を含めた大腿筋膜張筋が固くなり短縮している状態の為、このような現象が起きることになります。
腸脛靭帯炎の治療は?
腸脛靭帯炎の治療は保存療法となることが一般的です。
まず原因となっているランニングなどの運動量を中止・軽減し、安静にすることが最優先となります。
急性期と呼ばれる初期の段階では腸脛靭帯の炎症を抑えるために、局所のアイシングをしたり、消炎鎮痛剤(痛み止めの内服や湿布)を使用します。
また、症状が強い場合には炎症の起きている部位にステロイドや局所麻酔などの注射を行うこともあります。
徐々に痛みが軽減してきたら、リハビリテーションを行いながら競技への復帰を進めていくことになります。
腸脛靭帯炎のリハビリテーションは?
腸脛靭帯のリハビリテーションは痛みをとることはもちろんですが、運動への復帰を目的に行います。
再度炎症を繰り返さないための身体作りや靴やインソールなどの選定も重要な役割となってきます。
腸脛靭帯の炎症の改善
治療の部分で前述したように、まず炎症を抑えることが優先となります。
急性の段階では上記の治療と並行して超音波治療や電気治療などを行い、炎症の軽減を図ります。
膝関節の周囲の機能の改善
腸脛靭帯炎の痛みの原因は腸脛靭帯の固さが引き起こすことが多いため、柔軟性の向上が必要となります。
また腸脛靭帯は大殿筋や大腿筋膜張筋と繋がっているため、これらの筋肉のストレッチも大事なリハビリとなります。
それと関連して殿部の筋肉の力が低下することにより、腸脛靭帯への負担も大きくなるため、殿部の筋力アップも大切でしょう。
ランニングフォームの改善
腸脛靭帯炎の原因となるランニングの動作の改善も重要となります。
当たり前のことでありますが、ランニング動作は人によって違いがあるため、それぞれの走り方の問題点は様々です。
全身の各関節の可動域や筋力、バランス能力など多くの因子が複雑に関係してきます。
その動作をしっかりと評価し個人にあったリハビリテーションを行うことが必要となってきます。
また、O脚や回内足などの形態異常に対してはインソールやテーピングなどが有用となります。
こちらも人それぞれの形態に合わせたものを選択することが治療していく上で大きな役割を果たします。
最後に腸脛靭帯炎と診断された場合に自宅でも行えるストレッチやトレーニングを紹介します。
大腿筋膜張筋+腸脛靭帯リリース
痛みがある側の足を下にして側臥位をとり、大腿筋膜張筋・腸脛靭帯の部分にテニスボールやストレッチポールを当てます。
手や肘で上体を支えながらボールがある部分をゴロゴロとスライドさせます。
痛みが強く出る場合もあるため、ご自分で体重をかける量を調整しながら行いましょう。
膝関節周囲のトレーニング
膝を伸ばす大腿四頭筋の筋力アップを図ります。
大腿四頭筋のトレーニングは様々ありますが、代表的かつ簡易的なものとしてSLRを紹介します。
SLRは仰臥位(仰向け)の状態で膝をできるだけ真っ直ぐにした状態でお腹にしっかりと力を入れ、足をゆっくり挙げ下ろしします。
時期にもよりますが、回数としては10回を2~3セット行うことを目安としましょう。
股関節周囲の筋力トレーニング
大殿筋や中臀筋などお尻の周囲の筋力を鍛えます。
大殿筋の場合は仰臥位にて両膝を曲げお尻を持ち上げます。
足を持ち上げたときに腰が反りすぎないように身体を一枚の板のようにすることがポイントです。
中臀筋は股関節を外側に開く作用があります。
側臥位の状態で下の足は軽く曲げた状態で、上の足が身体のラインから前に出ないように、少し後ろに引きながら上方向に挙げていきます。
股関節の運動も回数としては痛みが出現しないことを確認しながら10回を2~3セット行うようにしましょう。
※こちらに紹介したストレッチやトレーニングの一部は必ずしも皆様の今の状態に有効とは言えませんので、現在の状態や時期などを専門家に確認の上行うことをお勧めします。